どんぶり勘定を卒業する、1つの現場・1品の本当の利益の出し方
「全体では黒字」でも、実は中身は分かっていない
年度末に帳簿を締めてみたら、なんとか黒字だった。でも、「どの仕事で儲かって、どの仕事で損していたのか」と聞かれると、はっきり答えられない。そんな社長さんは、実はとても多いです。
これは決して恥ずかしいことではありません。日々の仕事に追われていれば、一件一件の損得を細かく出す余裕なんてないのが普通です。ただ、「全体では黒字」の中には、しっかり儲かっている仕事と、実はほとんど利益が残っていない仕事が混ざっています。それが見えていないと、「安く受けてしまった仕事」を頑張って増やしてしまう、といったもったいないことが起きます。
どんぶり勘定を卒業するといっても、いきなり細かい原価計算をする必要はありません。まずは「1つだけ」正確に出してみることから始めます。
まずは「1つの現場・1品」だけ、本当の利益を出してみる
おすすめは、全部を一度にやろうとせず、代表的な仕事を1つだけ選んで、そこにかかったお金と時間を丁寧に洗い出すことです。
建設業なら、直近で終わった現場を1つ。製造業なら、よく作る部品を1品。飲食業なら、看板メニューを一皿。IT業なら、よく受ける定番の案件を1件。それを選んで、「入ってきたお金」から「かかったお金」を引いてみます。
このとき見落としがちなのが、材料費だけを引いて満足してしまうことです。本当の利益を知るには、材料費のほかに、そこに使った人の時間、機械や車の燃料、外注に払ったお金、そして意外と大きい「運ぶ・片付ける・やり直す」時間まで含めて考える必要があります。
「人の時間」を、ざっくりでいいので値段に換算する
一番見えにくいのが、人件費、つまり「人の時間」です。ここをどんぶりにしていると、本当の利益はいつまでも見えません。
とはいえ、難しく考える必要はありません。「うちの現場は、1時間あたりだいたいこれくらいのコスト」という目安を、ざっくり決めてしまえば十分です。その時給の目安に、その仕事にかかった時間をかければ、人にかかったお金がおおよそ見えてきます。
たとえば「1時間3,000円くらい」と決めておいて、5時間かかった作業なら1万5,000円。この一手間を加えるだけで、「材料費だけ見れば儲かっていたのに、時間を入れたらほとんど残っていなかった」という現実が見えてくることがあります。飲食店で「原価は安いのに手間がかかりすぎて割に合わないメニュー」が見つかるのも、たいていこの計算からです。
1つ分かれば、「似た仕事」にそのまま応用できる
1つの現場・1品を正確に出す価値は、その1件だけにとどまりません。一度やり方が分かれば、「これと似た仕事は、だいたい同じくらいの利益率だな」と、他の仕事にもあてはめて考えられるようになります。
そうすると、次に見積を出すときの感覚が変わります。「この条件なら、これ以上安くすると赤字だな」という線引きが、勘ではなく数字で見えてくるのです。安請け合いを防ぎ、値上げの根拠にもなります。全部の仕事を細かく計算しなくても、代表的なパターンをいくつか押さえておくだけで、経営の見え方はずいぶん変わります。
まとめ:今日は「直近の1件」の入りと出を書き出してみる
どんぶり勘定の卒業は、大がかりな会計システムからではなく、たった1件から始められます。今日やるのは、直近で終わった仕事を1つ選んで、「入ってきたお金」と「かかったお金(人の時間も含めて)」を紙に書き出してみること。その1件がはっきりすれば、似た仕事の利益もぐっと見えるようになります。
五月雨では、こうした中小企業の業務改善やDXのお手伝いをしています。「原価の出し方を自社に合う形で仕組みにしたい」といったご相談も、身近なところから一緒に考えられればと思っています。
