仕事の失敗は「学び」だった。大吉日の不運を、ワタシが受け入れた日
仕事の失敗は「学び」だった。大吉日の不運を、ワタシが受け入れた日
大吉日。朝一番に鳴った電話は、きっと良い知らせに違いない──。
そう信じて受話器を取った僕に告げられたのは、
期待とは真逆の、「仕事見送り」の連絡でした。
正直、ドはまりした現場の次の日だったので、ホッとした部分もあり。
縁起が良いはずの日なので、良かったのか?と複雑な気持ちでいました。
しかし、話を聞くうちに、不思議と落胆の感情は薄れていきました。
そして、最終的には「ああ、やっぱりそうか」と、
深く納得している自分がいたのです。
「納得」してしまった本当の理由
今回見送りになった案件は、僕が担当したお客様の中でも、特に誠実な方でした。
人柄も素晴らしく、ぜひ仕事をご一緒したいと強く思っていました。
しかし、その仕事にはいくつかのリスクがあったのです。
海に面したエリアでの作業のため、潮風による塩害の影響が予想されました。
また、現場への道具運搬には、桟橋を渡る必要があり、
手が滑れば海。
という安全面でも気を遣うべき点でした。
ワタシは、これらのリスクを抱えつつも、仕事が欲しいという気持ちが勝り、
見積もりは安価に設定しました。
もしリスクが現実のものとなった場合、
その予算ではカバーしきれないことが分かっていたにもかかわらずです。
さらに、決定後に再度現場視察をさせてほしいと伝えていました。
お客様からの見送りの理由は、「金額以外の部分で他社に決めた」というものでした。
その言葉を聞いた瞬間、腑に落ちる感覚が広がりました。
ワタシの「再視察」という提案は、
お客様に「この会社はまだ現場を十分に把握していないのでは?」という
不安を与えてしまったのかもしれません。
リスクを抱えているのに安価な見積もりを出した僕の姿勢が、
見方によっては、無責任に映ってしまったのでしょう。
金額以外の部分──つまり、「安心感」や「信頼」。
これこそが、僕が今回は提供しきれなかった価値でした。
見送りの連絡から得た2つの大切な教訓
今回の経験は、僕にとって単なる「失敗」ではありませんでした。
むしろ、今後の仕事のやり方を根本から見直す、貴重な学びになったのです。
- プロとして「安心感」をどう伝えるかお客様は、単に安い金額を求めているわけではありません。
問題なくスムーズに仕事を進めてくれるという
「安心感」にこそ価値を見出しているのです。リスクを抱える案件こそ、そのリスクをどうマネジメントし、
問題が起きても対応できるというプロとしての姿勢を明確に示すべきでした。リスクを承知で安価な見積もりを出すことは、
むしろお客様を不安にさせるという、大切な教訓を得ました。 - 誠実さは、仕事を超えた財産になる今回のお客さんは、見送りという連絡をわざわざ電話で、
しかも丁寧な言葉で伝えてくださいました。
この誠実な対応がなければ、
ワタシはきっと「単に負けた」としか思えなかったでしょう。しかし、その誠実さがあったからこそ、
僕は自分の至らなかった点に気づき、
この経験を成長の糧にすることができたのです。
今回の出来事は、大吉日に起きた不運だったのかもしれません。
しかし、それは当社を次のステージへと進めるための、最高の学びだったと
今は確信しています。
そして、いつか、この誠実な担当者さんと、
別の形でご縁が繋がる日が来ることを心から願っています。
失敗は、未来への投資。そう思えるようになった大吉日でした。
