インボイスで一人親方との取引、現実的な落としどころ
「一人親方との取引、どうしたらいいのか」と迷っていませんか
インボイス制度が始まってから、建設業の現場でよく聞くようになった悩みがあります。それが、一人親方や小さな協力会社との取引をどうするか、という問題です。長年一緒にやってきた腕のいい職人さんが、いわゆる免税事業者だった。インボイスに登録していない相手との取引をどう扱えばいいのか、頭を悩ませている社長さんは多いのではないでしょうか。
「登録してもらった方がいいのか」「登録しないなら取引をやめるべきなのか」「でも、あの人の腕は手放せない」——立場によって事情は違い、簡単に割り切れる話ではありません。人情と経営の間で揺れている、というのが正直なところだと思います。
制度の細かい取り扱いや税額の計算は、必ず税理士などの専門家や公式の情報でご確認いただくことが大前提です。そのうえで今日は、現場としての「考え方」と「落としどころ」を整理してみたいと思います。
まず「相手の事情」と「自社の負担」を分けて考える
この問題がこじれやすいのは、「相手にどうしてほしいか」と「自社がどれだけ困るか」がごちゃ混ぜになってしまうからです。いったん切り分けて考えると、頭の整理がしやすくなります。
一人親方の側にも、それぞれの事情があります。登録すれば新たに納税や事務の負担が生じます。規模の小さい職人さんにとって、これは決して軽くありません。一方で自社の側は、登録していない相手との取引で、これまでと比べて負担が増える場面が出てくる可能性があります。どちらが良い悪いではなく、双方にそれぞれの事情がある。まずはこの前提に立つことが、冷静な話し合いの出発点になります。
「その職人さんの価値」で判断する
現実的な落としどころを考えるうえで、大事な視点があります。それは、金額の損得だけでなく、「その職人さんが自社にとってどれだけ大事な存在か」という視点です。
代わりのきかない腕を持ち、長年信頼を積み重ねてきた職人さんなら、多少の負担が増えても付き合いを続ける価値は十分にあるかもしれません。逆に、時々しか頼まない相手であれば、また違う判断もあるでしょう。数字だけを見て一律に「登録していないから切る」と決めてしまうと、目先の損得のために、お金では買えない信頼や技術を失うことにもなりかねません。取引を「コスト」だけで見ず、「関係の価値」も含めて考えることが、後悔しない判断につながります。
一方的に決めず、正直に話し合う
どんな結論になるにせよ、避けたいのは、一方的に条件を押しつけたり、黙って取引を減らしたりすることです。長く付き合ってきた相手なら、なおさらです。「制度が変わって、うちもこういう事情がある。あなたの側の事情も聞かせてほしい」と、正直にテーブルについて話すこと。これがいちばん大事です。
お互いの事情を出し合えば、「登録を検討してみる」「取引の条件を少し見直す」「今のまま続ける」など、双方が納得できる形が見つかることも多いものです。大切な取引先を、制度のせいで気まずくして失うのは、あまりにもったいない。誠実な対話こそが、現実的な落としどころへの近道です。
今日からできる小さな一歩
まずは、取引のある一人親方や小さな協力会社を一度書き出して、「この人は自社にとってどれだけ大事か」を自分なりに整理してみてください。そのうえで、大事な相手から順に、正直に話す場を持つ。答えを急がず、まずは相手の事情を聞くところから始めるのがおすすめです。
繰り返しになりますが、税務上の具体的な取り扱いは必ず税理士や公式の情報でご確認ください。五月雨では、こうした悩みを整理して、取引先との向き合い方を一緒に考えるお手伝いをしています。一人で抱え込みそうなときは、気軽に声をかけていただけたらうれしいです。
