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業務改善

2026/07/18

「あの人しかできない」を減らす、仕事の見える化

「あの人が休むと、会社が止まる」

「ベテランのあの人が休むと、その日はもう仕事が回らない」。そんな声を、中小企業の社長さんからよく伺います。

長年やってくれている頼れる人がいるのは、本当にありがたいことです。でも同時に、少し怖いことでもあります。その人が急に体調を崩したら。定年で辞めることになったら。あるいは、他社に引き抜かれてしまったら。会社の大事な仕事が、一人の頭の中だけにある状態は、実はかなり危うい橋を渡っているんです。

これを「属人化」と呼びます。今日は、この属人化をどう減らしていくか、そして「あの人しかできない」を少しずつ「みんなができる」に近づけるための、地味だけど効く方法を一緒に考えてみたいと思います。

属人化は、本人のせいではない

まず知っておきたいのは、属人化は本人が悪いわけではない、ということです。

「教えてくれないからだ」と思われがちですが、多くの場合、ベテランの方は自分の仕事を言葉にする時間がありません。目の前の仕事で手一杯で、しかも本人にとっては当たり前すぎて「何を教えればいいのか」がわからない。長年の勘やコツは、頭で考えずに手が勝手に動く領域に入っているので、いざ人に伝えようとすると言葉にならないんです。

たとえば製造業で、機械の微妙な音の変化で不具合を察知するベテランがいたとします。本人は「なんとなくわかる」としか言えない。でも、よくよく聞いていくと「甲高い音が続いたら軸受けを見る」といった、実は言葉にできる判断基準が隠れていることがあります。

属人化を減らす第一歩は、本人を責めることではなく、その頭の中を少しずつ外に出すお手伝いをすることです。

全部ではなく「詰まりやすい一点」から

見える化というと大がかりに聞こえますが、全部を一度にやる必要はありません。むしろ、それは失敗のもとです。

おすすめは、「その人が休むと一番困ること」を一つだけ選ぶという手です。会社によって違いますが、たいてい「これだけは」というものがあります。飲食店なら仕込みの分量とタイミング、建設業なら特定の客先とのやり取りの段取り、IT系なら本番環境の設定変更手順。まずはその一点だけを、紙でもメモアプリでも構わないので書き出してみる。

このとき大事なのは、完璧を目指さないことです。ベテランに「全部教えて」と言うと身構えられてしまいますが、「今日この作業だけ、隣で見ながらメモ取らせてもらっていいですか」なら受け入れてもらいやすい。作業しながら「ここ、なんで今そうしたんですか」と聞いていくと、本人も気づいていなかったコツが言葉になっていきます。

飲食店で、ベテランパートさんの仕込みに新人が一週間つきっきりでメモを取り、写真も撮らせてもらった例があります。出来上がったのは立派なマニュアルではなく、走り書きのノートでしたが、それでも「あの人が休んでも仕込みが回る」ようになった、と店長さんが喜んでいました。

「一人で抱えない」空気をつくる

見える化を進めるうえで、実は一番効くのは仕組みより空気かもしれません。

「自分だけができる」ことを誇りにする人もいますが、それを続けると本人も休めなくなります。「知っていることを共有してくれる人が偉い」という空気を、会社として作っていくことが大切です。

たとえば、共有してくれたベテランに「おかげで安心して任せられる」と一言かける。マニュアルを作ってくれた人を朝礼で軽く紹介する。そうやって、抱え込むより出したほうが得だと感じてもらう。これは時間はかかりますが、じわじわ効いてきます。

今日の小さな一歩

まずは、「この人が明日から一週間休んだら、一番困ることは何だろう」と考えてみてください。思い浮かんだその一つを、次にその人が作業するとき、隣でメモを取らせてもらう。それだけで、会社の危うい橋が一本、丈夫になります。

五月雨でも、こうした「頭の中の見える化」を現場に負担をかけずに進めるお手伝いをしています。気になったら、覗いてみてください。

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