設備が止まる前に気づく、お金をかけない予知保全
突然の設備故障に、ヒヤッとした経験はありませんか
「昨日まで普通に動いていた機械が、朝スイッチを入れたら動かない」。製造の現場では、こんな瞬間が一番こたえます。納期が迫っている、代わりの設備はない、修理業者を呼んでも部品が来るまで数日かかる。生産は止まり、現場は大慌て。社長さんにとっても、頭を抱えたくなる場面だと思います。
こうした突発の故障を防ぐために「予知保全」という言葉があります。設備が壊れる前にその兆候を捉えて、手を打つという考え方です。ただ、こう聞くと「センサーをつけて、データを集めて、AIで分析して……お金がかかりそうだ」と身構えてしまう方も多いのではないでしょうか。
でも、実はお金をかけなくてもできる予知保全がたくさんあります。今日はその話をしたいと思います。
一番のセンサーは、職人さんの五感
高価な測定機器を入れる前に、忘れてはいけないものがあります。それは、毎日その設備に触れている職人さんの感覚です。
長年同じ機械を扱っている職人さんは、「いつもと違う音がする」「なんだか振動が大きい」「油のにおいが変わった」といった違和感に、驚くほど早く気づきます。この「いつもと違う」という感覚こそ、最も優れた予知保全のセンサーです。壊れる設備は、たいてい何かしらのサインを出しています。異音、発熱、振動、におい、動きの渋さ。これらは故障の前触れであることが多いのです。
大切なのは、その気づきを「なんとなく」で終わらせず、拾い上げる仕組みをつくることです。ベテランの感覚を、現場みんなで共有できる形にする。ここにお金はほとんどかかりません。
「いつもと違う」を記録する紙一枚
そこでおすすめしたいのが、簡単な点検メモを一枚つくることです。設備ごとに、始業前に「音」「振動」「油の量や汚れ」「温度(触ってみて熱すぎないか)」といった項目をチェックする。異常がなければマルを一つつけるだけ。所要時間は一台あたり1分もかかりません。
このメモの本当の価値は、「変化に気づける」ことにあります。毎日つけていると、「最近、この項目でよく気になる印がつくな」という傾向が見えてきます。それが、故障が近づいているサインかもしれません。人の記憶は曖昧ですが、紙に残せば変化がわかる。スマホで機械の音を毎朝10秒録音しておくのも、後で聞き比べられて有効です。
「そろそろ交換」を決めておく
もう一つ、お金をかけずにできるのが、消耗品の交換時期をあらかじめ決めておくことです。ベルト、フィルター、潤滑油、刃物など、使えば必ず劣化するものは、「壊れたら替える」のではなく「この期間で替える」と先に決めておく。壊れてから慌てて手配するより、計画的に交換する方が、結果として止まる時間も費用も少なくて済みます。
カレンダーに交換予定を書き込んでおくだけでも立派な予知保全です。「まだ使えるから」と引っ張った結果、稼働中に壊れて大きな損害になる、という事態を避けられます。
今日からできる小さな一歩
まずは一番大事な設備を一台だけ選んで、始業前1分の点検メモを始めてみてください。項目は「音・振動・におい・温度」の4つで十分です。数週間続けるだけで、「この機械のいつも」がデータとして見えてきます。それが、突然の故障を減らす第一歩になります。
五月雨でも、現場の実情に合った「お金をかけない見える化」を一緒に考えるお手伝いをしています。もし気になることがあれば、気軽に声をかけてくださいね。
